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■三条市 Y様邸 圧倒的な開放感を味わえる、大きな吹き抜けのあるリビング

おばあさんの畑だった土地に立つ、カントリー調の住まい

2023年の6月に完成し築1年が経過したY邸は、三角屋根が連なるかわいらしいフォルムの住まい。この家には、20代後半のYさん夫婦とまだ1歳に満たない娘さんの3人家族が暮らしている。

「アパートの家賃を払うのがもったいないと思っていましたし、早めにローンを組んで早めに返し終えたいという思いもあり、家づくりの計画を始めました」と奥様。

家を建てた場所は三条市内の住宅街にある土地で、ご主人のおばあさんが持っていた畑を譲り受けて農地転用したという。

はじめは大手ハウスメーカーや県内で広く展開する住宅会社を訪れていたが、「社長の人柄やレスポンスの早さ、家の雰囲気、自由度の高さなどが決め手になり、スタイルハウスさんに依頼することにしました」と奥様は話す。

Y邸の入口に近づくと、ポーチの手前にはご主人が自ら仕入れた乱形石が張られており、そのカントリー調の雰囲気は塗り壁で仕上げられた建物と調和している。

ポーチの袖壁と天井の仕上げはレッドシダー。木・タイル・石・塗り壁の異素材が同じトーンでまとめられ、穏やかで温かい雰囲気が生まれている。

理学療法士のご主人が考案した、老後も住みやすい工夫

玄関ドアを開けると、そこはゆったりとしたホール。

玄関土間は横に広く、袖壁で仕切られた場所は扉のないオープンな下足入れ。その隣のカウンターはバッグなどを置くスペースで、その上のハンガーバーにはアウターをかけることができる。土間はベビーカーを置くのにもちょうどいい広さだ。

このゆったりとした玄関ホールは、理学療法士で普段リハビリテーションの仕事に携わっているご主人が希望したものだという。

「将来足腰が弱くなり、車椅子が必要になった時でも、出入りしやすい家にしたかったんです。玄関にベンチを設けているのは下足しやすくするためですね。1階の建具はドアではなくすべて引き戸にしていますが、それも車椅子での動きやすさを意識したものです」とご主人。

さらに、玄関ホールにはトイレが面しており、やはりここも車椅子での使いやすさを考慮して幅を広めにしている。

「あと、僕はトイレに長く籠もるのが好きなので、落ち着ける雰囲気の空間にして頂きました(笑)」(ご主人)。

ゆったりと家事や身支度ができるランドリールーム

ホールをまっすぐ進めばLDK。一方、左手に進めば広々としたランドリールームにつながる。

先ほどのトイレのダークトーンの内装はご主人の希望でコーディネートしたものだが、こちらの白やベージュを基調とした明るい空間は、奥様の希望を形にしたものなのだそう。

ヘリンボーンのクッションフロアに、幅広の造作洗面台と一枚ものの大きな鏡。天井に固定されたハンガーバーは、動線の邪魔にならないように壁に沿って設置されている。一般的な住宅のランドリールームや洗面室の固定観念に捉われない、ゆったりとした広さが気持ちいい。

「アパートの洗面台が狭くて使いにくかったので、新しい家では広くしたかったんです。朝、夫と洗面スペースを使う時間が重なっても、今は並んで使えるのでストレスがありません。広いカウンターはアイロンがけをするのにも便利ですね。それから、物干しのバーは2本が平行に設置されることが多いですが、それによって空間が窮屈になるのが嫌でL字のものにして頂きました。バーは使いやすい高さをシミュレーションして最適なサイズのものを選びました。あと、ランドリールームからキッチン側へと短い距離で回遊できる動線もあり、生活しやすいですね」(奥様)。

光あふれる吹き抜けのリビングで憩う

一度玄関ホールに戻り、正面の引き戸を開けると、目の前には高天井の大きな空間がパッと広がった。

この大きな吹き抜けは奥様が新しい家で叶えたかったことの中でも、最も優先順位が高い要素だったという。

「吹き抜けは広いほどいいなと思っていました。より空間が広く見えるようにアイアン階段を希望し、光がたっぷり入るように吹き抜けの上の窓はなるべく大きくして頂きました。日中は照明を使う必要がないですし、本当に明るくて気持ちいいですね」と奥様。

2階の天井まで伸びる白い壁は美術館を彷彿させるスケール感で、白を背にした黒いアイアン階段のコントラストも美しく、ただ階段を上り下りするという何気ない行為が、ここでは特別なことのように感じられる。

高窓は光を導くだけでなく、空を飛んでいく鳥や夜空に浮かぶ月を眺めるという風流な楽しみももたらしてくれているそうだ。

大きな吹き抜けのリビングとは対照的に、キッチン&ダイニングは下がり天井で少し籠り感のある落ち着いた雰囲気がつくられている。

ダイニングは食事の準備や片付けがしやすい横並びのレイアウトで、フラットなキッチンの前にはハイチェアが2脚並んでいる。お酒を飲むことが好きなYさん夫婦が希望した、バーのような非日常感を味わえる楽しい一角だ。

キッチンの後ろのカップボードには、電子レンジや炊飯器、ポットやエスプレッソマシンなどの家電がずらりと並び、その上の飾り棚にはドリッパーやケトルなどのコーヒーの道具が並んでいる。

ダイニング横の掃き出し窓の外にはゆとりある庭が広がっており、おばあさんが育ててきたプラムや梅の木が涼しげな影をつくりながら揺れている。

「食器は食洗機で洗い、乾いたらすぐ後ろの収納にしまうことができて便利ですね。キッチンに立った時に正面のリビングで子どもが遊んでいる様子が見えるので、安心して食事の準備ができます」(奥様)。

家のいろいろなところに見られるアーチ型のニッチも奥様のこだわりで、その一部はお札を置く神棚のような役割も果たしている。

ビデオ会議がストレスなくできる書斎も完備

吹き抜けの開放感は1階だけでなく、2階にいても味わうことができる。

1階にいる家族との距離は吹き抜けのおかげで近くなるし、高窓からは1階よりも抜け感のある景色が眺められる。

吹き抜けがなければ上下階は分断されてしまうが、吹き抜けが2つのフロアをつなぐ役割を果たすため、この家ではどちらの階にいても立体的な広がりが感じられる。

2階には全部で4つの部屋が配されており、その中で最も小さいのが2畳の書斎だ。

「仕事でビデオ会議をすることも多いですが、アパート暮らしの時はそのための部屋がなくて不便だったので、この家には書斎をつくって頂きました。小さな空間なので壁も収納として使えるように有孔ボードを張ってもらったり、デスクの前に可動棚を付けてもらったりしました。有孔ボードにはカバンや時計をかけておくことができますし、壁に穴をあけずに済むのもいいですね」とご主人。

リモート部屋のそばにはウォークインクローゼット併設の主寝室があり、こちらで家族3人で川の字になって寝ているのだそう。

「服が好きでウォークインクローゼットは絶対欲しいと思っていたんです。でもそのために吹き抜けを小さくするのも嫌で…(笑)。そこでご提案を頂いたのが、ウォークインクローゼットを独立させずに寝室と一緒の空間にして、室内窓で区切るアイデアでした。このような造りにしたことで、吹き抜けの大きさを変えることなくウォークインクローゼットを確保できました。室内窓のおかげで、寝室側にいてもクローゼット側にいても広く感じられます」(奥様)。

やりたいことを妥協せず、後悔のない住まいを実現

プランニングの過程では、どの部屋を広くするかで夫婦間で意見が別れることもあったという。

「夫は書斎やトイレ、お風呂を広くしたいと考えていて、私はランドリールームや吹き抜け、ウォークインクローゼットを広くしたいと思っていました。それで平面図がなかなか決まらなかったですし、最初にご提案を頂いた図面から随分違う形になりました。寝室の入口のドアを斜めにすることで省スペース化するご提案を頂いたり、細かい調整を繰り返しながら今の形になりました。打ち合わせの時間が長くなり、小林社長や設計の江口さんに夜まで付き合って頂くこともありましたね」と奥様。

ご主人は「建材や照明をいろいろ自分で調べて、“施主支給”をするものもいくつかありました。建材を探す過程も楽しかったですし、それらの組み合わせでどんな空間ができ上がるんだろう?と想像するのもワクワクしました」とご主人。

最後に1年間住んでみての感想を伺った。

「やっぱり吹き抜けが広いのがすごく気持ちいいです。あと、以前住んでいたアパートはお隣の生活音や声が聞こえてきていたので、そこで子育てをするのに不安がありました。今こうして一軒家で暮らしていると、子どもが夜泣きをしても周りを気にしなくていいので楽ですね。あとは回遊できる動線や広いランドリールームがあり、生活がとてもしやすいです。よく『家は3回建てないと理想の家にならない』と言われますが、妥協せずにやりたいことをやれたのでとても満足しています」と奥様。

「僕はトイレを落ち着いた空間にできて満足しています。あとは、老後のことを考えてお風呂を広めにしたのですが、子どもと一緒に入る時も楽でいいですね。家づくりを進める中で、どんな建材があるのかを自分でもいろいろ調べましたが、施主自身が知識を深めることも大切なことだなあと思いました」(ご主人)。

日々の生活をしっかりイメージしてつくり込んだ動線に、理学療法士のご主人が重視した老後も暮らしやすくする工夫。大きな吹き抜けに、こだわりの造作家具やインテリアなど、注文住宅ならではの魅力が凝縮している。

賃貸住宅や建売住宅では叶えられない自由な住まい。Yさん家族はその心地よさや楽しさを感じながら、新しい日常を過ごしている。

Y邸
三条市
延床面積 105.17㎡(31.81坪)
構造 木造軸組工法
竣工年月 2023年8月

写真・文/Daily Lives Niigata 鈴木亮平

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